ソムリエの
お話し
SOMMELIER


18 ヴィンサント

たっぷりとした甘み、とろ~りと蜜のように流れ、琥珀色に輝く美しいワイン、ヴィン・サント…

シロップ漬けのアプリコットやイチジク、香ばしいナッツ、カラメル、スパイスなど、いろいろな香りを楽しめ、一口含めば、その甘美な味わいに心まで満たされ、幸せな気持ちにさせてくれるワインです。
世界にはさまざまな甘口ワインがありますが、イタリアは甘口ワインの宝庫。その中でもヴィン・サントは最もポピュラーな甘口ワインの一つと言えるでしょう。

ヴィン・サントのルーツは、実はイタリアではなく、ギリシャのサントリーニ島にあるというのが今や定説となっています。
ギリシャのワイン造りの歴史はなんと5000年以上といわれ、現在イタリアで栽培されている土着品種の中には、紀元前8世紀頃から、古代ギリシャ人がイタリアに入植した際に持ち込んだとされるブドウ品種が数多くあります。
ただヴィン・サントが伝えられたのはもっとずっと後で、中世後期のこと。ヴェネツィアの商人たちがギリシャのワインを輸入し、中でもサントリーニ島の甘いワインが非常に人気となり、そのワインを真似して造り始めたのがヴィン・サントの始まりだそう。
ヴィン・サントは聖なるワインとも言われます。ヴィン=ヴィーノ(ワイン)、サント=聖人(聖なる)という意味かと最近まで思っていたのですが、本当は、サント=サントリーニ島、という意味だったんですね。

そして現代、ヴィン・サントといえばトスカーナ州のワインです。
実はヴィン・サントは、甘口から辛口までさまざまなタイプがあるのですが、よく知られているのは甘口タイプですね。
ブドウを収穫後、通気性の良い部屋で数ヶ月陰干しをすることでブドウの糖度を高め、その後圧搾し、カラテッリと呼ばれる小さな樽で発酵、長い熟成(最低3年以上)をさせて造るワインです。

 

 

 

現在、トスカーナ州でDOC(統制原産地呼称ワイン)に認定されているヴィン・サントは4つあります。
ヴィン・サント・デル・キァンティ
ヴィン・サント・デル・キァンティ・クラッシコ
ヴィン・サント・ディ・モンテプルチァーノ
ヴィン・サント・ディ・カルミニャーノ

この中で私は、2016年の秋、ヴィン・サント・ディ・カルミニャーノの生産者「テヌータ・ディ・カペッツァーナ」を訪問した際、ラッキーにも陰干し中のブドウを見せていただくことができました。
トスカーナ州北西部の都市、プラートから西へ7kmほどのところにそのワイナリーはあります。

 

 

 

 

 

風通しの良い2階にある陰干し部屋へ入ると、その美しさに息を飲みました。アペニン山脈からのそよ風を感じられる室内には、たくさんのブドウがキラキラと輝き、まるで宝石のよう見えたのです。

カペッツァーナ社では、ヴィン・サントには陰干しに耐えうる最良のブドウが早い時期に選別され、9月中旬には収穫されます。収穫後もブドウが傷つかないようにブドウを重ねることは一切せず、細心の注意を払い、陰干しの行程へと移されます。
約5ヶ月陰干しされたブドウを圧搾して得た非常に甘いブドウジュースをカラテッリ(50リットルから150リットルで主に栗の木が使われている)という小さな樽でゆっくりゆっくり2~3年かけて自然に発酵させ、そのまま約6年間熟成させます。
ヴィン・サントを造るには長い時間が必要なうえ、凝縮された果汁から得られるワインはごく少量。だから希少で高価なのです。

カペッツァーナ内のレストランで楽しませていただいたのは、ヴィン・サント風味のなめらかで上品なアイスクリームとヴィン・サントという、文句なしのペアリング。
また地元のペコリーノチーズ(羊乳のチーズ)との組み合わせも楽しいものです。

ヴィン・サントというと、トスカーナ名物のビスコッティ「カントゥッチ」と楽しむものとよく言われますが…、

一口にヴィン・サントと言っても、庶民的で低価格ものから、洗練された味わいの高品質なもの、長い熟成を経た古いヴィンテージのものまで、さまざななタイプがあります。甘口だけでなく辛口もあり、白だけでなくロゼもあります。
ですから、「ヴィン・サントにはカントゥッチ」という定石にとらわれず、そのヴィン・サントの格と味わいによって、いろいろな楽しみ方にトライしたいですね。

もちろん、上質なヴィン・サントをそのままの味わうのも最高ですよ。