ソムリエの
お話し
SOMMELIER


23 ワインの熟成

ワインの魅力といえば…

色がキレイだから
香りが豊かでうっとりするから。
美味しいから。
セレブな感じがするから。
食事との相性が良いから。
多様性があり、一本一本との出会いが楽しいから。
知的好奇心をくすぐられるから。
健康に良さそうだから。
などなど…
多くの魅力を持つワインですが、その最大の魅力ともいえるのが

「熟成」

ではないでしょうか…?


ワインの熟成とはいったいどのようなものなのでしょう?
そして、ワインは熟成するとどのように変化するのでしょうか?

通常、私たちが購入するワインはすでに飲み頃を迎えています。
ワインの種類によりその熟成期間は異なりますが、ワイナリー内で樽熟成や瓶熟成など、しばらく静置され美味しく飲むことができる状態になってからリリースされるからです。
実際、「熟成」という言葉の意味を探るとさまざまな意味がありますが、この段階における熟成とは「発酵製品において、主発酵が終わったのち、さらに静置して味をならすこと」に一番近いのではないかと思います。
酒販店で購入したりレストランで飲むワインは、ごく一部の特別なワインを除いて飲むのに早すぎるということはありません。


ところで私たちを虜にするワインの熟成とは「その後の熟成」のことです。
瓶詰めされたワイン内にほとんど酸素はない状態ですが、わずかに混入している酸素の影響で緩やかに酸化熟成が進んでいきます。

ワインは熟成によって、外観、香り、味わいが変化します。

〈白ワインの場合〉

外観は、緑がかった淡い黄色だったものが、緑の色調が抜け、濃い黄色へ変化していきます。
次第に黄金色を帯び、琥珀色となります。リンゴやバナナなどのフルーツが、酸素と触れると茶色っぽく変化するイメージと似ています。
香りは、フレッシュなものからドライなものへと変化します。
フレッシュフルーツはドライフルーツへ、フレッシュハーブはドライハーブへ、またナッツやハチミツ、トースト、カラメル、キノコなどの新たな香りが生まれ、複雑なものとなります。
味わいは、果実味(甘み)、酸味といった味わいの要素がそれぞれはっきりと主張し、フィレッシュ感があり、場合によっては尖っている部分もあったものが、角が取れ、丸みを帯びた印象へ変化します。しなやかで柔らかく、落ち着いたまとまりのある味わいとなります。

 

〈赤ワインの場合〉

外観は、紫がかった濃い赤色だったものが、紫の色調が抜け、オレンジがかった淡い赤色へ、さらにはレンガ色へ変化していきます。濃かったものが淡くなるので、白ワインとは逆の変化です。
香りは白ワインと同様、フレッシュなものから湿ったもの、さらにはドライなものへ変化します。
ジャムやドライフルーツ、森の下生え、腐葉土、トリュフ、タバコ、紅茶、枯葉、毛皮、なめし革など、白ワイン以上に複雑性が生まれるのが赤ワインです。
味わいの変化は基本的には白ワインと同じで、全体的に一体感のある調和した味わいとなります。
ただ、赤ワインには渋みがあります。若い段階で豊富だった渋みの量は熟成により減少していきます。また質に関しても、ザラザラしたものが滑らかに、しなやかに変化します。


このような熟成スピードは、ワインによって異なります。
ブドウ品種や産地、栽培方法、醸造方法、熟成容器の大きさ、そしてヴィンテージ。
同じ造り手の同じワインでも、そのヴィンテージによって大きく異なる場合があります。
一般的に、日照量が十分でブドウの健全な成熟に恵まれた、いわゆるグレートヴィンテージのワインは熟成スピードが遅く、反対に恵まれなかった年は熟成スピードが早い傾向にあります。
「何年後が飲み頃(ピーク)か」という話がよくありますが、この飲み頃とは、ワインの香りや味わいの複雑性が増し、全体が調和し、最も大きく発展した状態のことをいいます。
飲み頃を予測するためには、ワインの基本的な情報に加え、その年の情報を差し引きして考えること、さらに多くのテイスティング経験が必要です。
また、ワインは熟成させればさせるほど発展するというものではありません。
ピークを過ぎたワインは、香りのボリュームが落ち、味わいのスケール感も小さくなり繊細なものとなります。全体として枯れたような印象になるわけですが、このような味わいの変化は、人が成長し、働き盛りを迎え、やがて衰えていくというような人生にどこか重なる部分があります。
熟成の進んだワインはしみじみとした美味しさがあり、感慨深い気持ちにさせてくれます。

ワインは熟成を楽しめる飲み物です。

今手元にあるワイン、すぐに開けて飲んでも十分楽しめますが、
これは!!」という特別なワインは、ワインセラーなどの保管に適した条件の場所数年熟成させてから開けてみてはいかがでしょう?

その一本が驚きの出会い、
格別の喜びをもたらしてくれるかもしれません。