ソムリエの
お話し
SOMMELIER


27 グラッパ

レストランサービスをしていて、食後酒としてグラッパがずいぶん定着してきているように感じます。
特にご接待などで男性のお客様が多いお席では、締めのお酒として、グラッパが圧倒的に人気です。

ところでグラッパとはどのようなお酒なのでしょうか?

グラッパとは、ワインを造る際の副産物である「ブドウの搾りかす(ヴィナッチャ)」を蒸留させて造るイタリアのお酒です。
アルコール度数はたいてい40度以上あります。もともとは北イタリアの農民たちが寒い冬に体を温めるために飲んでいた安酒ですが、近年では蒸留技術の進歩によりさまざまなスタイルの洗練された味わいのグラッパが楽しめるようになりました。

おおまかに分類すると、
樽熟成をさせていないもの(無色透明タイプ)、薬草などを加えたもの樽熟成させたもの(ゴールドから琥珀色タイプ)の3つのカテゴリーに分けることができ、
さらにブドウ品種ごとの個性を生かしたものや、高級感のあるボトルに入ったもの、サッシカイアやオルネッライアなどの有名ワインのグラッパなどもあり、もはや安酒というイメージはありません。

グラッパという言葉は、「grappapolis(ブドウの房)」というラテン語に起源をもつそうです。
そして現在、グラッパの約40%が生産されているのがヴェネト州。その内陸にアルプス山脈に属する「グラッパ山」と名付けられた山があります。
何世紀も前からグラッパを造っていた人がいた、との言い伝えからそのように名付けられたそう。その麓の街「バッサーノ・デル・グラッパ」にあるグラッパ造りの名門「ポーリ」社を訪ねました。

ポーリ社の創業は1898年と古く、当時は手押し車に小さなアランビック(蒸留器)をのせ、近所の家々を周り生計を立てていました。
現在に至るまではいくつもの苦難があったそうです。その最たるものは戦争。戦時中はグラッパを作ることができず、また第2次世界大戦後はいくらグラッパを作っても安い値段でしか売れず、国内の蒸留所の数は激減しました。
1980年代初め、品質の高いグラッパを作ろうと方向転換したことが功を奏し、今では世界67カ国に輸出する有名なグラッパメーカーとなりました。

バッサーノ・デル・グラッパの街には清らかなブレンタ川が流れ、そこにかかるポンテ・ヴェッキオ(アルピーニ橋)は16世紀にイタリアを代表する有名建築家アンドレア・パッラーディオによって設計された屋根付きの木製ポンツーン橋です。

ここをまっすぐ進んでいくとポンテ・ヴェッキオ。

 

 

 

 

ポンテ・ヴェッキオからブレンタ川を臨みます。

 

 

 

 

ポンテ・ヴェッキオを渡り終えた先に、ポーリ・ミュージアムがあります。
ポーリ・ミュージアムは2つあり、こちらは1993年に設立された旧ミュージアム。
昔使われていた古い蒸留器の展示があり、蒸留技術の発展の歴史を見ることができます。またポーリ社のグラッパを試飲・購入できます。

 

 

 

 

 

この博物館から南西に約10kmほど行ったスキアヴォンというところに、ポーリ社の蒸留所ともう一つのミュージアムがあります。
このミュージアムの設立は2011年、蒸留所も敷地内にあり、ポーリ社の製品の全てを試飲することができます。

 

 

 

 

訪問時、ちょうど原料のヴィナッチャが届いており、まさしくグラッパが製造されているところでした。健全で新鮮なヴィナッチャを使用することが最も大切です。

 

 

 

 

 

 

 

蒸留塔の小窓からはヴィナッチャから蒸発したアルコールが通っているのを見ることができます。

 

 

 

 

 

 

 

蒸留後、冷却されて液体となったグラッパはこちらに流れ着き、最初の約10%は雑味が多く、最後の約15%は油分が多いため使用せず、アロマが豊かで雑味の少ない中心部分が製品となります。
このときアルコール度数は約75%。加水により適切なアルコール度数に調整されます。

 

 

 

 

 

 

 

そして圧巻だったのは熟成庫。
バリック(小樽)がズラッと並べられ、トンノー(中樽)やシェリー樽も。

 

 

 

 

もちろんサッシカイアのバリックもありました。

最後は瓶詰め。瓶詰めはオーダーが入ってから行われます。

 

 

 

 

蒸留後の搾りかすは燃料や家畜の飼料などに利用され、循環されます。

 

 

 

 

 

 

 

グラッパはもはや安酒ではありません。
今回の訪問で、無色タイプのグラッパは品種別に蒸留され、まるでワインのように品種の個性を感じられる豊かな香りを大切にし、クリーンでピュアな味わいを表現する方向へ、そして樽熟成タイプはリッチな香りと重厚な味わいで、より高級感がありゴージャスな方向へ進化しているように感じました。

リラックスでき、体も温まり、消化を助けてくれ、気持ちも満たされるグラッパ。
ストレートでそのまま、または砂糖をたっぷり入れたエスプレッソと、そして甘いデザートやチーズとともにいかがでしょうか。

食後の豊かな時間を、ぜひグラッパでお楽しみください。


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